シニアの金言
今日、はじめて席を譲られたわ
76歳女性
ひとりのシニアの中に多様なシニアがいる
誰しも歳を重ねるとそんな経験をすることになる。シニアであることを自覚する機会のひとつである。席を譲られたときの反応はひとさまざま。「大丈夫ですから」と固辞するひと、「次で降りますので」といって次の駅で車両を乗り換える人、「ありがとう」と素直に好意を受け入れる人。
でも、どんな人であっても最初に言われたときはちょっと複雑な気持ちになるに違いない。
立っているのが辛い、重い荷物が負担…そのように感じていたら、やっぱり歳をとったなと感じて素直に受け入れるだろう。人から常々「若いわね」といわれていれば「どうして?」と少し反発さえ感じて戸惑うかもしれない。
若いと言われ、自分もそうだと自負していても、ふとした瞬間にちょっと猫背になっていたり、髪の手入れが行き届かなかったりしたときもある。そんなときに他から「老い」と見られてしまうことはちょっと辛い。でも、それが現実である。ずっと若いときは何も気を使わなくても席を譲られることはなかったのだから…。
シニアの金言を読み解く
人が「老い」を自覚することを「老性自覚」という。老性自覚は身体的加齢による「内からの自覚」と社会的加齢による「外からの自覚」に分けることができる。
身体的加齢による「内からの自覚」とは視覚や聴覚などの衰え、足腰が弱くなるなど筋肉の減少などによって自ら老いを自覚することを言う。社会的加齢による「外からの自覚」とは定年退職、子の独立、友人の死、他人からの老人扱いによって自らの老いに気づくことである。
電車で席を譲られたときに戸惑うのは自分が「保護する立場」から「保護される立場」に変わったことを「外からの自覚」で知ることになるからだ。
シニアというのは暦年齢ではない。自ら「老い」を自覚したときからシニアの仲間入りをするのである。
シニアは老いを感じながらも、自己を肯定的に捉えようとする傾向がある。その一つに「暦年齢=実年齢」に対して、自分が何歳くらいと思っているかという「主観的年齢」とのズレがある。ほとんどのシニアは実年齢より自分は若いと考えている。調査によると子どものうちは「実年齢<主観的年齢」だが20歳前半を境に「実年齢>主観的年齢」となる。しかも年齢を重ねるに従い、その差が大きくなるという。
実年齢と主観的年齢のギャップが席を譲られたときの戸惑いにつながっている。シニアに響くコミュニケーションを心がけるなら、実年齢と主観的年齢を上手く使い分ける必要がある。シニアが「内からの自覚」で困っている場合は「実年齢」で、「外からの自覚」で悩むときには「主観的年齢」を意識して呼びかけ、それに対する有効な対処法を提案する。
ひとりのシニアの中には多様なシニアとしての自覚がある。その自覚を一括りにせず、細かく分けて考えることが大切だ。そうすればあなたの提案する製品やサービスがシニアにとって「自分ごと」として心に響くのである。
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